すれ違うぬくもり 〜わたしに映る、あの子のまなざし〜

 

近づこうとしただけなのに、
ふっと、身を引いた。

手を差し伸べたつもりだったのに、
まるで「なにか」を拒まれたような気がして
心がきゅっと、すぼんだ。

あの子の目が、一瞬かたまる。
まぶたの奥の、警戒と不安。
…ああ、今日は距離がある。

悲しいとか、傷ついたとか、
そういう言葉でもなくて
ただ、「さみしい」が
じわっと胸の奥に広がった。

でも…ほんとうは
わたしの中に、
その距離があったのかもしれない。

 

本当に触れたかったのは、
あの子の体じゃなくて
ぬくもりを通して
自分の安心を感じたかったのかもしれない。

「癒されたい」
「そばにいてほしい」
「わかってほしい」
そんな思いが
無意識のうちに先走っていたのかもしれない。

あの子の距離感は、
わたしの心の輪郭を映している。

 

近づこうとしているのに、
ほんとうのわたしは
どこかで「拒絶されるのがこわい」って思っていた。

「通じないかもしれない」
「このままだと、愛されないかもしれない」

その不安を
きっとあの子は、感じ取っていたんだ。

だから、
「逃げる」という選択で
ただ、伝えてくれていた。

「あなたの中の、ほんとうのきもちに気づいて」って。

 

わたしは、
あの子のために近づいたつもりで
ほんとうは、
自分の不安を埋めようとしていただけだったのかもしれない。

ぬくもりは、
コントロールできるものじゃない。
信頼は、急かせるものでもない。

 

ただ、今
深呼吸して、
わたし自身にそっと触れてみる。

「さみしかったね」
「わかってほしかったんだね」
「愛されたかったんだよね」

そんな気持ちを
やさしく抱きしめてみたら、
ほんの少し、胸の奥がほどけてきた。

その瞬間
さっきより少しだけ近くに、
あの子のぬくもりを感じた。

 

今日の気づきは、
目に見えないけれど
たしかに、ふたりをつなぐ橋になる。

 


「わたしが“触れようとした”とき、
ほんとうに触れたかったのは、なに?」

 

わたしたちはいつも、
出会いなおすことができる。
たとえ、何度でも。

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このお話を読んで、あなたはどんな場面を思い浮かべたでしょうか。

もしかしたら──
心を込めて声をかけたのに、恋人が少し冷たく感じた日。
笑顔で近づいたのに、子どもにそっけなくされたあの瞬間。
「大丈夫?」と気づかって声をかけたのに、同僚に迷惑そうな顔をされたとき。

それとも、
手を差し伸べたくせに
ほんとうは、自分が誰かに抱きしめてほしかった日のことを
ふと、思い出したかもしれません。

近づいたつもりなのに、遠ざかってしまう。
わかってほしかったのに、伝わらない。
あたたかくなりたくて触れたはずなのに、どこかですれ違ってしまう。

犬のまなざしに映った“ぬくもりのすれ違い”は
あなたの心にも、きっと覚えがある風景なのではないでしょうか。

この物語は、
犬と人との小さな一場面のようでいて、
実は人間関係の深い“原型”を描いています。

たとえば、親子。
まだ幼かった自分が、母親のぬくもりを求めて伸ばした手。
でもその手は、忙しそうな背中に届かず、胸の奥に“さみしさ”だけが残った──。

あるいは、パートナー。
そっと寄り添ったつもりなのに、なぜか距離を置かれて
「なんで分かってくれないの?」と心の中で問いかけていた夜。

そんな記憶のどこかに、
あなたが抱えたままの“不安”や“寂しさ”があるかもしれません。

この記事が映し出しているのは、
他者との距離ではなく、自分自身との距離。

「近づきたい」と思ったとき、
本当は「拒絶されたくない」「わかってもらえないのがこわい」という気持ちが
心の奥に、隠れていたのかもしれない…

それに気づいたとき、
誰かとの関係性だけでなく、
“わたしとわたし自身の関係性”が少し変わっていくのです。

犬のまなざしは、ただ静かに
あなたの心の輪郭を映してくれているのかもしれません。

そしてその瞳に気づいたとき、
わたしたちは、また新しい関係に出会いなおすことができる。

たとえ、何度でも。

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🌱犬との関係に悩むとき

犬との関係に悩む時

それはきっと、「自分自身との関係を見直す時期」でもあるのかもしれません。

一人では気づけなかったことに、
誰かの言葉やまなざしがそっと光を当ててくれることもあります。

気づきは、心の静けさの中から生まれてくるもの。
犬の行動の裏側にあるメッセージを受け取りながら、
自分自身との対話を深める時間を持ってみませんか。

愛犬のまなざしは、
あなた自身のまなざしでもあります。

もし、心の奥に何かが響いたなら——
それは、あなたの中にある「ほんとうの願い」が、ようやく声をあげはじめた瞬間なのかもしれません。

あなたと犬、そして魂のつながりを深めていく旅。
心がふと動いたその瞬間から始まる旅を、静かに寄り添いながら歩いていけたらと思います。

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