鏡としての犬たち

鏡としての犬たち

聞こえなくなった「おかえり」 〜静かな距離〜

ただいま、って言ったのにいつもの足音が聞こえない。 玄関のドアを開けても、あの子はベッドから動かない。 前はね、走ってきてくれていた。しっぽを大きく振って、鼻を鳴らしながらスリスリして。そのぬくもりに、わたしは毎日救われていた。 なのに最近...
鏡としての犬たち

その瞳が教えてくれた、わたしの後ろめたさ

外出の準備をしているとカチャッとカバンの金具が鳴るたびにふと、気配が変わる。あの子の耳がピンと立っていつの間にか玄関の前に座っていた。大きな目でじっと見つめてくる静かだけど、心に響く視線。「大丈夫だよ」そう言って撫でながら笑顔をつくるわたし...